<第二章 天の川銀河系の興隆(銀河341部族)>5

 <第一回銀河開戦>

 プレアデス連合はその後、白鳥座文化圏の開拓を委託されてワシ座のアルシャイン(β星)を始めとした6個の天体に入植し、その周辺領域(聖地と40光年~60光年の距離)をプレアデス連合領域としました。一方、カシオペア連合にも新たに4個の星の開拓が委託されて、蛇遣い座のサビク(η星)を中心にした領域に進出し、その周辺をカシオペア連合領にしました。両者のテリトリーが隣接していた為に、宇宙船の航路問題で度々悶着が起きる様になっていました。今から47万年前の話ですが、警告を無視して侵入して来たカシオペアの宇宙船をプレアデス側の戦艦が攻撃、そこから開戦の火蓋が切られました。カシオペア連合が最初に600台の艦隊をワシ座領域に送り込んで来た事から、プレアデス側も500台の艦隊を現地に派遣してこれに応戦し、壮絶な撃ち合いとなりました。地理的な状勢ではプレアデス側にカシオペア側が遠征して来るという形式の戦争だった事から、その後の三度に渡るカシオペアの増援部隊も段々と旗色が悪くなって、その大半が帰還する事が出来ませんでした。結局3年間の戦闘の結果、カシオペア側が白旗を上げて降参し戦争の決着は付きましたが、プレアデス側の損失も撃墜された円盤が1200機、失った兵員は6万人に上りました。

 

 カシオペア連合はこの戦争で1600機の円盤を失い、また9万人もの犠牲者を出して、更に白鳥座文化圏のカシオペア領土(7星)をプレアデス側に明け渡す恰好となってしまいました。これで銀河系の四つの文化圏のうち、プレアデス側が三つの領域の実権を握った形となり、カシオペア43連合国は北極星の近辺に閉じ込められた恰好となりました。以後、銀河部族の啓蒙と開拓はプレアデス連合が一手に引き受ける事となり、この戦争以来プレアデス連合は240もの部族を統轄する様になりました。当時の戦艦が装備していた武器は「力学分子破砕砲」と呼ばれるもので、この武器とその照準を定める為の力学センサーの性能次第で勝敗の行方が定まりました。つまり分子破砕砲の射程距離とその威力の問題、あるいは光速で航行する船体を捕捉するセンサーの効力範囲の問題という、その二つの問題が戦争の勝敗の鍵を握っていたのでした。創造主マニュアルには武器製造技術などの伝授項目はありませんが、これらはいつの世の宇宙においても人間が競い合って開発して行くものでした。49万年前に鶴座のテゲエオ星人の属州(ネール星)で開発された人類初めての力学武器(スズ・バイゾン励起砲)、それが当時の銀河人類には伝搬していました。

 

 プレアデスーカシオペア戦争の後、「分子破砕砲」と「力学センサー」の開発争いが始まって、戦争の600年後には魚座のβ星(恒星フム・アル・サマカー)の民族が他民族に先駆けて力学機器(センサー技術)を開発しました。その頃は石英結晶(水晶: SiO2)を用いたバイゾン機器(最初はレントゲンとして使用)だったのですが、その結晶技術がプレアデス連合国側に伝搬し、銀河系では力学機器が広く活用される様になりました。しかし一番活用されたのはやはり軍事分野であり、数千万km程度の至近距離範囲ですが力学レーダー網の設置が可能となりました。また、原始的な「スズ(Sn)蒸気バイゾン励起砲」は斬新的な「クリプトン60面体バイゾン励起砲(プレアデス連合の研究機関で開発)」に切り替わり、分子破砕砲の射程距離が従来の5倍に当たる1億kmにも達しました。これは木星と火星の間を飛ぶ敵円盤を地球から撃墜できるという画期的な武器だったのです。こうした戦争技術が銀河系におけるプレアデス連合の絶対的な地位を支え続けて来ました。

 

 今から39万年前の話ですが、プレアデス評議会はカシオペア地区の興隆を図る為に、カシオペア連合国の制圧に乗り出して、3000機の大艦隊を送り出しました。プレアデス連合の突然の来襲に苦もなく蹴散らされたカシオペア連合は、約10万年間の歴史の幕を閉じる事になりました。この第二回目の銀河戦争によって、プレアデス連合は300を超える銀河民族の大半を手中に収めた事になり、誰もが認めざるを得ない絶対政権を築く礎となりました。その後(今から36万年前)、石英クリスタルに取って代わる画期的な発見があって、イルカ座のイプシロン星(デネブ・ダルフィム)の民族が、力線操作が可能なカーボン・クリスタル機器の開発に成功し、その技術が本格的な宇宙時代の幕開けを到来させる事になります。80光年先の距離を見渡せる革新的な航路レーダーの開発は、より速い宇宙船を生み出して行く事になりました。最終的に航路レーダーの性能は120光年距離に及び、また宇宙船の速度も300光年/yにも及びました。日本で言えば政治的に最も安定していた江戸時代になるでしょうか、天の川銀河系史上に最も安定した時代をもたらしてくれたプレアデス連合の黄金期が以後36万年間も続くのでした。

 

 しかし、プレアデス文化は基本的に貴族文化、そのお陰で多方面に渡る芸術が発達し、裕福な人々は有意義に暮らす事しか考えなくなって来ていたのでした。それは平和がもたらす弊害と言うべきなのでしょうか。その間に、プレアデス連合が余りに遠い距離(約2000光年)にあった為に、全く気にも掛けなかった郊外の田舎民族が、雑草を食べて生き抜き、日々の鍛錬を積み上げてコツコツと勢力を拡大して来ていました。それはオリオンの遥か向こう側に一箇所、そしてオリオン領内にも一箇所ありました。前者はアリニラム三星連合体、後者はベテルギウス三星連合体でした。この二つの勢力がやがてプレアデス黄金期を破壊して、銀河系を混乱の渦中に巻き込んで行く事になります。平和は戦争で勝ち取るもの、しかし平和は人間を腐らせて行くものなれば、我々人間とは基本的に修行僧でいなければならないのかも知れません。

次回に続く